虫媒花です。皆様こんばんは。
BJ第98話「犬のささやき」について:
虫媒花は団地に住んでいます。
基本的に公団はペット飼育は禁止なんですが、生き物を飼っている
お宅は少なくありません。
エレベーターに乗ると犬を連れた人にたびたび会うし、下から仰ぐと
ベランダでウサギがピョンピョンはねているのが見えるお宅もあります。
そういうお宅は、あくまでこっそり飼っているので(飼っているのが
バレないように)吠える犬なんかには声帯の手術をほどこしている
ようです。
声帯の手術をされた犬の声・・・皆様、聞いたことがおありでしょう
か?
人間も風邪をひいて声が出なくなると、ヒーヒーと呼吸音しか出なく
なりますけど、まああんなもんです。
ワンもキャンもなく、たしかに静かではあるんですが、あれはあれで、
いつもいつも近くで聞かされていたら耳障りかも・・・
でも耳障りだなんて言うのは、犬の立場になってみればひどすぎます
よね。
「ふざけるなっ」と言いたくなるんじゃないかしら。
今回のBJは、犬の声帯を手術して、死んだ恋人の声が出るように
した男のお話です。
恋人はグラマーな美女で、彼のことをとても愛していました。彼は
たぶん恋人の顔もスタイルも表情も心ばえも、ぜーんぶ気に入って
いたんでしょう。でも彼女の死によって、テープに録音されてあった
彼女の声以外のものは、何もかもこの世から失われてしまいました。
できっと彼は「彼女を復活させたい」と考えたんですね。「気が
すすまない」と言うBJに無理やり頼んで、手術をしてもらったん
です。
最初は彼の目には彼女そのものに見えていた犬が、だんだんとただの
犬(トイ・プードル)にしか見えなくなっていきます。
犬は彼になついているんですが、彼に新しい女ができると、前の恋人の
声で鳴くという理由で、彼にはその犬がうとましく感じられるように
なってしまいます。
しかし犬は、そんなことには関係なく・・・
痛ましい話ですが最後には救いが感じられます。命をとりとめた男は、
犬の声で吠えるようになった(BJが元に戻した)犬を、今度こそ
ちゃんとした態度で可愛いがるようになるでしょう。
BJには男の心のうつろいが読めていたんでしょうか?
だから「1年で元に戻す」と言ったのか。それとも、ただこのままじゃ
犬が可哀想、と考えたから言ったのか。
私、考えたんですが、BJから見たら「声帯を手術された犬」という
ものは、「ビョーキの犬」なのかもしれません。それは自分がおこなった
手術の結果なのだけれど、ビョーキにかかった犬を治療しなければ気が
すまないのが、BJの「さが」なんじゃないかなあ、なんて。
この話、実は少年チャンピオン連載時に読んだときには、「あなた好み
の女になりたい〜〜」という、徹底的に男性に媚びた歌詞の歌謡曲を
思い出してしまって、不快になったんです。
「女も可愛い、犬も可愛い。女と犬は同類」といわれたような気もして
・・・
でも、今回読み返したら、そんなことは全然感じませんでした。
けなげなヌーピーを、哀れでとても可愛いと素直に思いました。
昔ああいうふうに考えたのは、私が若かったからなんだなあ・・・
虫媒花
おがわです。
BJ 第98話 「犬のささやき」 出演キャラクターリスト(出演順)
?・・・・・・・・・・・・・・・・阿部小路忠明
?・・・・・・・・・・・・・・・・さより
?・・・・・・・・・・・・・・・・ヌーピー
中村捜査課長・・・・・・警官
ブラック・ジャック・・・・ブラック・ジャック
ヒョータンツギ・・・・・・ちっちゃな女の子(まちがい)
スパイダー・・・・・・・・まちがいを指摘するもの
ブタナギ・・・・・・・・・・まちがいを指摘するスパイダーに同意するもの
ピノコ・・・・・・・・・・・・・ピノコ(ほんもの)
?・・・・・・・・・・・・・・・忠明の新しい彼女
今回もほぼ全滅。
昔読んだときは虫媒花さん同様あまりいい印象を持たなかったのです
が、今読むとよく出来てますね、これ。
ヌーピーののどに録音された限られたセリフを実にたくみに使って、効
果をあげています。
特にラスト2ページのヌーピーの「セリフ」の絶妙な間!
おがわさとし