みなさん今晩は。金沢みやおです。
今日は大阪梅田の「まんだらけ」に行ってみました。手塚全集DVDの体験版
CD-ROMが有ればと思いましたが、見当たりませんでした。せっかく来たので、
講談社漫画文庫「エンゼルの丘」、角川文庫「平原太平記」を買いました。
「エンゼルの丘」。ページを繰るなり「これから姫の処刑をおこなう」と来た。
おー、いきなりヒロインが死刑か。面白くなりそうだぞ…。さて、
「道すがら」
うーむ、この回はどうも印象が薄いです。
読みどころとしては、
(1) 顔役ロペスのせがれが、自分を襲った覆面の強盗であると見ぬくBJ。
BJがそれを見ぬけたわけは?。
(2) いろいろ取材して描かれたと思われる、異国情緒ある風景いろいろ。
羊やアヒル?の群れを連れて移動する村人達、厚い土壁の建物、壁に
架けられた小さな十字架とキリスト像、などなどの描写。
(3) バカなせがれでも可愛いロペス。その苦渋に満ちた落とし前のつけかた。
などでしょうか。でも、私の記憶に残るのは
(4) 散歩で出会ったヤギが「メーッ」と鳴くのに相手をして、アッカンベー
をしてみせる、おどけたBJのノンキなコマ。
だったりします。
このバカ息子ですが、お話の当事者のくせに最後までセリフがありません。
BJとロペスのやりとりをメインに据えたから、中途半端に息子をからませ
るのを避けたんでしょうかなあ。
おがわです。
BJ 第96話 「道すがら」 出演キャラクターリスト(出演順)
ブラック・ジャック・・・・・・・ブラック・ジャック
オッサン・・・・・・・・・・・・・・村人
ラムネ・・・・・・・・・・・・・・・・村人
カルピス・・・・・・・・・・・・・・村人
車十三郎・・・・・・・・・・・・・ロペスの手下
ミス・ゾルゲ・・・・・・・・・・・ロペスの妻
大僧官・・・・・・・・・・・・・・・ロペス
?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ロペスの息子
ヨッツン・・・・・・・・・・・・・・・ロペスの使用人
オッサンはなまず髭の村人です。これだけしゃべる役というのは
けっこう珍しいですね。初期作品ではほとんど皆勤賞ものの出演
をしているキャラクターですが、たいていちょい役です。
「罪と罰」のマルメラードフのような重要な役をやることもあるんで
すが。
ロペスの手下の中で、BJと同じような蝶ネクタイをした白目の男が
いますが、おそらくこれは「ケン1探偵長・昭和新選組の巻」に出て
きた車十三郎です。とくに最初の一こまはよく似ています。
ロペスの妻は髪型からミス・ゾルゲとしました。
ロペスは「0マン」の大僧官です。
ロペスの息子は誰かなあ。片目という特徴から、既出キャラとすれば
同定は簡単なはずですが、分かりませんでした。
おがわさとし
虫媒花です。
BJ第96話「道すがら」について:
先日、この回のヒキ(?)を書きました。
強盗に襲われ半死半生の目に合わされたBJ。あとになって、この
強盗の実の父親が、息子である強盗を縛りあげてBJのもとに連れて
きます。
父親はBJに拳銃を手渡し「さあ犯人を引き渡す。ぞんぶんにして
くれ。殺すがいい。殺せ」と言います。要するに復讐しろ、恨みを
はらせ、ということなんですが・・・さて、BJはどうしたでしょうか?
これは、こう書くと答はすぐにわかってしまったと思います。
「いくらひどい目に合わされたって、BJが復讐するわけないじゃん」。
・・・・・
はーい。そうなんです。結論を言いますと、BJは強盗を撃たない
んです。
はははー! (^o^) これじゃヒキにならないですねえ。
金沢さんには「印象が薄い」と書かれてしまうし、倉田さんには
飛び越されて次の97話を絶賛されてしまうし、惨めな96話 (^o^)
です。
でも、このラストを読者に予想させないために、手塚先生はずいぶん
工夫をなさってるんですよ。私はその点を確認しておこうと思います。
冒頭、峠にさしかかったBJの車を止めた強盗一味は、銃の台座で
BJの頭を殴り、腹を突き、数人がかりで袋叩きにします。キャー。
倒れたBJは、ピクリとも動けない状態で、道路上に放置されます。
その体の上から照りつける、スペインの強烈な太陽。空には、
ハゲタカ(?)が舞う。
やがてBJは、通りかかった村人に救われるんですけど、その村人
の家のベッドに寝かされた彼は、顔中にアザができて、顔はすっかり
黒くなってしまってます。
おいたわしやー、BJさまああ〜〜〜〜
強盗はBJを殺しはしなかったんだけど、「死ぬかもしれないが、
死んだってかまわないさ」と考えていたことがわかります。
もちろん、BJがせっかく稼いできた治療代も盗まれている。
これでBJ、腹が立たないわけがないですものねー。
その後BJは、村の顔役の家に呼ばれます。
破傷風にかかっていた、顔役の息子の治療を頼まれます。
ところがこの息子こそ、先日BJを襲った、にっくき強盗に
ほかならないということが、BJにはわかってしまいました。
そう告げると、「おれの息子にあらぬ罪をなすりつけようってのか」
と怒り狂う顔役ロペス。態度が大きい。
で、頭に来たBJ、診察を打ち切って出て行こうとします。
ここでBJが帰っちゃえば、見捨てられたロペスの息子すなわち
強盗は、このまま死んじゃったわけですよ。
ロペスは、BJに拳銃をつきつけ「ドクター、息子をなおすんだ。
なおさなければ・・・ここから出さねえから、そう思え」と脅します。
ますます、態度でかーい!
それでBJに治療してもらったロペスの息子は、なんとか一命を
取り留めるのですが・・・
手塚先生は、ここでBJが怒り、「こんな奴死んでもいい」と、
ほんの一瞬にせよ思ったということを、しっかり押さえてある
んです。
そう、ラストでBJがこの男を許すとは、予想されないように。
でも、本気で「死んでしまえ」と思ったら、治療もいいかげんな
治療をするはずですけれど、BJは全力で息子を救います。
BJが人を治療するのは毎度のことですが、いつも助けたい患者
ばかりじゃない。しかしそれでもBJは必死に治す。そのことが、
この回には特によく描かれていると思います。
また、息子に対するロペスの愛情も、この治療シーンで充分に
強調されています。
だから、ロペスが息子をBJの前に突き出すシーンを見ると、
読者はビックリです。
なんと!!! 可愛い息子の命よりも大事なものを、この男は持って
いたんですね!
そしてBJが言う「この男を私がうつと、また私はムラムラと
治したくなる。もう二度と、こんな男を治すのはごめんだ。つれて帰って
くれ」のセリフ。笑いを誘うような屁理屈ですが、BJというキャラには
それもあるだろうな、と思うわせてしまいます。
うれし泣きをするロペスの表情は「鬼の目に涙」というところ。
というわけで・・・
私は、非常によくできたお話だと思いますんですが。
虫媒花
薮内です。
> 虫媒花です。
> BJ第96話「道すがら」について:
> 金沢さんには「印象が薄い」と書かれてしまうし、倉田さんには
> 飛び越されて次の97話を絶賛されてしまうし、惨めな96話 (^o^)
> です。
先に弁護して下さって嬉しいです。
> でも、このラストを読者に予想させないために、手塚先生はずいぶん
> 工夫をなさってるんですよ。私はその点を確認しておこうと思います。
中略(ステキな文章をカットしてゴメンナサイ)
> だから、ロペスが息子をBJの前に突き出すシーンを見ると、
> 読者はビックリです。
> なんと!!! 可愛い息子の命よりも大事なものを、この男は持って
> いたんですね!
>
> そしてBJが言う「この男を私がうつと、また私はムラムラと
> 治したくなる。もう二度と、こんな男を治すのはごめんだ。つれて帰って
> くれ」のセリフ。笑いを誘うような屁理屈ですが、BJというキャラには
> それもあるだろうな、と思うわせてしまいます。
> うれし泣きをするロペスの表情は「鬼の目に涙」というところ。
>
> 私は、非常によくできたお話だと思いますんですが。
虫媒花さんの書かれたことは私も大賛成です。
倉田さんに飛び越されたとはいえ、この96話はあのラストシーンの
父親の「息子より大事なもの」を守る表向きの態度とBJに連れて帰れと
言われて泣き笑う、隠された父親の気持ちをあのワンカットで示した
この作品は手塚先生の心の余裕が現れた「すぐれた小品」と思います。
私は次の97話、そして次の98・99とここら辺りがBJの傑作群のような
気がしています。