みなさん今晩は。金沢みやおです。
桜も咲きましていよいよ四月。学校では新入生を迎えて新学期。
わが社にも,背広姿も初々しい新人がやってきました。気分も新たに
まいりましょう。といいつつ私はまだ休日出勤続き・・・あ〜しんど。
「しずむ女」
公害病の晦日市病訴訟。謝罪する公害企業の責任者,被害者救済委員担当
の誠意のないお役人,補償金を受け取れず救済からこぼれ落ちる精神薄弱
で身よりのない美少女ヨーコ。ヨーコの脳症状は晦日市病のためと見抜い
たBJは彼女の手術をし,さらにヨーコへの補償を求めてお役人相手に奔
走するが,お役人は病気の因果関係を容易にはみとめない。
ヨーコがつたない字で書き置きを残し,BJのために海にサカナを採りに
行った時,彼女の症状が後天的なもの(公害病のため)と明らかになるが
海辺に駆けつけたBJが発見したのは,手術後の回復が不十分なまま泳い
だため,永遠に海にしずむ人魚のようなヨーコの悲しい姿だった。
う〜〜〜〜。ヨーコ,薄幸過ぎ。せっかく文字が書けるところを見せたの
に,死ぬことになるとは不幸すぎるぞ。わずかに幸運だったことといえば
「オニイチャーン」と無邪気にBJに抱きつき,BJにやさしく抱きしめ
られた数少ない女性キャラとなれたコトだけか?。ピノコ激怒!。
時事・社会派ネタBJですが,公害企業とお役人をはっきりあっさり「悪
者」にキャスティングしたり,精薄児のヨーコを「バカ」の「うまれつき
コレ」のと他のキャラクタに言わせたりと,手塚先生なんだかあぶない〜。
小心者の私は余計な心配ではらはらし,のんきに作品を楽しむどころでは
ありませんでしたゾ。なんだか25年前の手塚先生から詰め寄られているよ
うでした。「どう思った?。キミのスタンスは?。」というふうに・・。
ところで,ヨーコとはやはり「港のヨーコ」(ダウンタウン・ブギウギバ
ンド)から来ているのかな〜。
おがわです。
BJ 第36話 「しずむ女」 出演キャラクターリスト(出演順)
?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・工場代表
力有武・・・・・・・・・・・・・・・・・・・原告団代表
?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヨーコ
ノールス・ヌケトール・・・・・・・・晦日市病救済委員
東南西北・・・・・・・・・・・・・・・・・晦日市病救済委員
ブラック・ジャック・・・・・・・・・・・ブラック・ジャック
オッサン・・・・・・・・・・・・・・・・・・医者
ノタアリン・・・・・・・・・・・・・・・・・パン屋
ボロゾーキン・・・・・・・・・・・・・・ヒゲオヤジを案内する男
ヒゲオヤジ・・・・・・・・・・・・・・・・ヨーコを病院に連れて行く男
ヨッツン・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヨーコを病院に連れて行く男
ノンキメガネ・・・・・・・・・・・・・・ヨーコを病院に連れて行く男
ブッコ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・カモ
チルチル・・・・・・・・・・・・・・・・・須崎病院院長
ヨーコは「どろろ」のみおとか、「ザ・クレーター」の「二つのドラマ」の
ナンシーとか、同じく「ザ・クレーター」の「ブルンネンの謎」のみどり
とか考えたんですが、決め手がないので「?」にしておきました。
特に「ブルンネンの謎」のみどりはニンフなのでかなり雰囲気的には
近いんですが、髪形が少し違います。
東南西北の鼻の形がいつもと違いますが、どうもこれは彼のデビュー
作である「ロック冒険記」のときのデザインを踏襲したもののようです。
「ロック冒険記」の中でも彼のデザインはけっこう変わるんですが、
ラスト近くになってからはこんな感じのとんがり鼻なんです。
まあ、手塚先生に聞いて見なければ真意は分かりませんが。
最後の方に出てくる病院長は「ふしぎ旅行記」でミチルのお父さんチル
チル氏として出てきました。チルチルじゃ可愛すぎると思うんだけど、
おそらくこれがデビュー作だと思うので、この名前にしておきました。
「キャプテンKen」のマモルのお父さんがこの人ですね。
おがわさとし
田島虫媒花です。
「しずむ女」について;
最後は海に死体となって浮かぶヨーコ。しずむ女って、しずんで
ないじゃないの。ちゃんと仰向けに浮かんでるし、回想シーンで潜
ってはいるけど、なら、潜る女でしょ、って・・・
突っ込むのが不謹慎に感じられるくらい、痛々しい話。
最後のコマで、ヨーコが海にはいる前に書いた置き手紙が、破り
捨てられて海面に散ってます。
と、いうことは、BJはこの手紙を捨ててしまったんですねえ。
この手紙を「ほら見ろ、ヨーコはもともと字が書けたんだ。知能
が落ちたのは、やっぱり公害のせいだったんじゃないか。こうやっ
て字がかけるまでに治療したんだから、治療費を払ってもらおう!」
と役人にたたきつけることもできたはず。
なのに、それをしなかったBJ。
ヨーコが死んでしまったからには、何をしても空しい・・・
BJが動いたのは、結局お金のためではなかったんだってことが、
このコマでわかるわけです。
破るシーンもなく、捨てるシーンもなく、ただ結果として、残骸
となって海面にただよう手紙を描いて、BJの心を表現してる。
・・・余韻。
ヨーコと申しますと、海を表す「洋子」か・・・なんて考えて、
矢代まさこの「ようこシリーズ」を連想してしまう私は、なんて古
い人間なのでしょうね!
田島加代子(虫媒花)Chuubaika
宮川です。 BJ 第36話 「しずむ女」 感想。
BJの作品の中には、公害病等に関する話しが結構でてきますね。
「しずむ女」も、その一つです。
公害病になったヨーコには、悲哀を感じてしまうのですが、これは
少女マンガに良くある幸せ薄いはかない少女を描いた物に類する
かもしれません。しかし、勝手ながら深読みとでもいうのでしょうか、
僕はこの話しのバック背景がしっかりとしていることと、そこに暮らす
住民の生活が少しですが描かれていることに、この話しの奥行き
みたいなものを感じます。
BJの話しは、1話が約20ページ程度ですから、その中で描く内容は
かなりコンパクトにしなくてはなりません。ヨーコがBJの手術を受けた
後に少し歩けたり、字も書けたりするシーンは、3コマぐらいに押さえな
くてはならなかったでしょうし、ヨーコの死も海に浮いているコマだけで
読者にインパクトを与えなくてはなりませんから、次にくるコマのヨーコ
の書いたメモは必然のような気もします。
タイトルの「しずむ女」という意味は、ヨーコのラストでのコマからくるも
のではなく、ヨーコという少女が公害病になってしまって、幸せ薄い
人生だったという宿命のような意味があったのではないでしょうか。
<補足>
・チャンピオンコミックス昭和版・平成版、変更なし。
・週間チャンピオン連載時の刷り色、ページ割り。扉表紙、P5:
本文−P6〜8.カラー.P11〜26.2色.ページ数、P20。
発行日、74.8.19.
Takehisa Miyagawa